プレシャス
…やだ
ダメ…
こんなとこで
泣いちゃダメ
ほら
乗らなきゃ
坂井君も変に思っちゃう
ちゃんと笑って
バイバイって…
ちゃんと……っ
なのに
「……っ…」
強ばって動こうとしてくれない体。
見たくないのにいつまでも視界から消えてくれない二人の姿。
…もう
やだ……
ずっと胸の奥に蓋をして閉じ込めてきた気持ちが…
涙が溢れそうになった
その時だった。
「…これ以上見なくていい」
それはまるで
目隠しするかのようにあたしの視界を遮ったのは温かなぬくもり。
静かに包まれる強い腕の中で
あたしは
ゆっくりと閉まる最終電車のドアの音を聞いた