プレシャス







…ケンカして


仲直りして


離れていても
心の繋がりは離れない


ちゃんと思ってること伝えられる
そんな関係…


そんな…
特別な二人






…頼子や圭介が

そんなふうになるまで何もしてこなかったなんて

そんなこと思ってない


でも





ずっと…
羨ましくて


同じ頃に始まった恋なのに

どうやってもなれないそんな自分が

惨めに見えて情けなくて…











「……っく……」









頼子達の前で
泣けなかったのは

たぶん
そのせいかもしれない。










泣いたら…
惨めな自分を認めなきゃいけない…

だからだったのかもしれない。












「…志穂さん、これ飲んで。暖まるし落ち着くから…」









手に渡されるホットミルク。











あたし…

坂井君に迷惑かけて…ダメだなもう…








でも









「…ごめんね…?」

「ホラ早く飲んで?…冷めちゃうから」










何も言わず
何も聞かずに


“泣いてもいいよ”

って…






そう接してくれる
そんな坂井君のこの優しさに


また涙は
ずっと





溢れるままだった






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