プレシャス






思えばあたし…

こんな風に泣いたのってはじめてかも










悲しい


辛い



苦しい…







そんな気持ち
誰かに口にするの
いつもためらってたから…













「……ん………あれ…あたし…いつの間に寝ちゃっ…て……」










でも
それでも

胸に詰まった真っ黒な思いを溶かすように


ゆっくりと吐き出させてくれたのは













「ん…はよ…?」


「…ずっと……ついててくれた…の…?」












片時も離れず繋いだままいてくれた

この手のぬくもりのおかげ












「…もう大丈夫?」

「あ………ごめんね?ありがと…」










マスターに鍵を返して外に出るあたし達

差し込む朝日は
泣きっぱなしで腫れた目にはキツかったけど



でも

我慢してた分、たくさん泣いたからかな




なんだか心は
ほんの少し軽く感じた。








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