プレシャス







まだシャッターの開かない地下街


そして構内に
チラホラと見えてるサラリーマン。







改札を抜けて
プラットホームに立つと、朝の冷たい風が頬を撫でていった。












「やっぱり朝は冷え込むね」







飲み物でも買ってくるかと自販機を探す坂井君。


その背中に謝らずにはいられなかった。











「坂井君、変なことに付き合わせて…ホントごめんなさい」











たまたま居合わせて関係ないのに巻き込んで…

普通なら
うんざりだよね

でも












「ありがとね。ちょっと…楽になれたかも」









今、少しだけ晴れた気持ちなのは

何も言わず坂井君が側にいてくれたから。





きっと
一人だったら

泣くことも出来ないまま、またどうにもならない気持ちを抱え込んでた。

だから…











「…これからどうするの?」


「…分かんない……たぶん…修とは…もうダメだと思う…」












もう傷付くのも
信じれなくて疑うのも…


そういうの…したくない











「たぶんあたし…恋愛とかダメなんだよ」








ホント“痛感”


そう笑いながら
ホーム奥の自販機へと足を向けた

その時だった








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