プレシャス
あの日
突然降ってきた不思議な提案に
あのまっすぐな瞳に不安が無かったとは言えない。
彼が切り出した“練習”の言葉
その意味…
真っ先に頭に浮かんだのは
あんまり…いいものじゃなかった。
坂井君だって
男の子
お店で見かける分しかあたしは彼を知らない。
普段の彼が
あたしが見たことない彼の部分が
修とは違うなんて
言い切れる自信なんて無かった。
もしかしたら…
セフレ…とか…欲しかったから…
とか……。
元々、あたし男運ってものが全くない。
修に限らず
歴代の彼氏にいい思い出なんて無かったから
あんな顔してても
坂井君もホントは…
でも。
「あ…先に言っとくけど…。“練習”って言っても…そういうことするつもりは無いから」
そんなあたしの不安に
先に釘を刺したのは坂井君の方だった。