辿りついた先は海
「…まぁ俺は」
気づけば目を伏せ腕に顔を埋めていた俺に、紺はそっと話しかける。俺も紺の方へ視線をあげる。
「お前が海に辿り着いて良かった。」
紺の細い指が俺の頬に触れ顎をなぞる。
触れた指先は冷たくて、はっきりと紺の存在を意識する。
「見失わずにすむ。…お前と違って走るのは苦手なんだ。」
そう言って触れた唇はやっぱり少し冷たくて、見失わずにすんだのは俺の方…。お前をこのまま感じていたい。
「俺は…夢の中の海だ。1つ違うのは、お前が先を望むならその道を開く。無理なら船になる。お前が行きたい所に続く道になり、走り続ける為の道になるって事。」
囁く言葉は優しくて
「だから絶対、見失わない。」
真っすぐで
「離さねーぞ。」
何よりも真実だった。


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