一緒に、歩こう





それでもあたしは、

矢野くんの言う通り

20分我慢した。

たった20分なのに、

あたしにとっては

何時間にも感じた。





「何やってんだろ…あたし」





言われた通りに準備室に来て、

言われた通りに20分待って。

何をやってるんだ、と。

自分で自分をばかだと思った。





「先生調理場来て!みんな休憩なの!」




教室に着くなり、

生徒があたしを調理場に

連れて行く。

入口には矢野くんがいたけど、

性格の悪いあたしは

何も言わず、彼のことも見ず。





「大丈夫?先生」




「え…?」




「泣いてたの?」





生徒があたしに問う。

あたしは急いで笑顔を作って、

元気な素振りを見せた。

うかつだった。

涙の筋を拭うことを

忘れていた。




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