一緒に、歩こう





「テストを返します」




次の日。

いつものように名前を順に呼ぶ。



「矢野くん」




微かに手が震える気がする。

渡す方の手に力が入る。




「おめでとう」





そう一言言うと、

勝ち誇った顔であたしを見た。





「約束、守れよ」




みんなには聞こえない声で、

矢野くんはそう言う。

あたしはそれに出来るだけ

反応せず、首だけ頷くと

黙って彼は席に戻って行く。

あたしは誰も気付いていないか、

変に勘付かれていないか、と

1人心臓をバクバクさせていた。





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