一緒に、歩こう
窓は開いていないのに、
どこからか寒い風が
足元を冷やす。
ガタガタ唇を震わせながら、
足早に歩く。
「あった」
準備室に入ると、
すぐ目に付く所に
教材が置いてあった。
「今年はここにお世話になったな…」
あたしは教室中を見渡して、
色々なことを思い出す。
授業中、寝ていた矢野くんを
呼び出したり。
文化祭の時に、
ここで一緒に過ごしたり。
「矢野くんばっかり」
いつの間にか、あたしの
頭の中は矢野くんのことで
いっぱいだった。
その時。
ブブブ…、と
携帯の着信音が鳴った。