一緒に、歩こう
ここからあたしは、
ずっと彼の姿を見てきた。
あたしの唯一の
楽しみでもあった。
「まだかな…」
誰が好きな人の背中を
見ることを、楽しみに
するだろうか。
あたしは、今日で
ここから見ることを
やめようと思う。
矢野くんが3年生になったら、
新しいあたしと接してほしい。
あたしはやり直す。
正真正銘の、
教師と、生徒に
戻るんだ。
「ちょっと失礼」
そこへ、準備室のドアが
静かに開いた。
「はぁ…、い」
本当に彼は、
神出鬼没だと思う。
いつだって突然だ。