一緒に、歩こう
「じゃ、俺も曲がろ」
あたしの言うことは無視で、
強引にも後を着いて来る。
「矢野くんは、この辺なの?」
「教えない」
「何でこっち来てるの?友達に家行くとか?」
「女送るのが男の役目」
いつも分からないことが、
今この瞬間に見えたもの。
制服じゃない姿なんて、
初めて見たし。
あたしを女と見てくれた
こととかも初めて知った。
切なくて、本当に苦しくなる。
「矢野くん、あたしもう近くだから…」
「前まで送るって。家知っても言いふらしたりしねぇし」
「でも生徒に送ってもらうって…、何だか悪い、」
あたしからしたら、
矢野くんは好きな人だけど。
矢野くんからしたら、
あたしなんて女の前に教師だし。
「生徒って考えんな。俺だって男だけど?」