一緒に、歩こう
「…来た、」
遠くの校門に、1人の影が見える。
目が霞むよう。
「おはよう、矢野くん」
茶色い髪が目立つ、綺麗な顔が特徴の
矢野隼人。
少し不真面目で、喧嘩してる
なんて噂が絶えない男。
彼は密かに、あたし
―――――朝比奈 芽衣子の想い人である。
「矢野!指導部行け!」
隣から指導部長の先生が、
矢野くんに短く告げる。
「うるせぇ、朝から。ちょっと何とか言って」
「…自業自得です」
ケチ、と言いながら
矢野くんはあたしの隣を
歩き過ぎ去っていく。
名残惜しいなんて、
あたしだけの感情。
毎朝、あたしはこの場所で、
彼が来るのを待っている。