一緒に、歩こう
「俺だって」
矢野くんは消えかける声で。
あたしをぎゅっと抱きしめた。
そして。
「俺だって、お前と居てぇよ?」
優しく、小さく、耳元で
囁いた。
「でもまだ俺ガキだし。何かあったらお前にも被害あるから」
ゆっくり。
子どもをなだめるように。
優しく頭を撫でながらそう言う。
変だな。
あたしの方が年上なのに。
何だか年下みたいな
気分になる。
大きな彼が、あたしを
すっぽり隠してしまう。
「俺はお前を守らなきゃいけねぇんだ」
「矢野くん…、」
自然と涙は出なかった。
でも心底、矢野くんが
愛しくて堪らなかった。