一緒に、歩こう
「待てよ、芽衣子!」
あの男が追ってくる。
「芽衣子!」
「…っ、ちょっと来て!」
あたしは見るに見かねて、
この男を誰もいない階段下に
連れ込んだ。
「ちょっと、竣。何考えてるの?」
「久しぶり」
長身、黒髪。
容姿端麗のこの男は、
あたしの同級生だけでなく、
あたしの幼馴染。そして、
あたしが唯一付き合っていた
元彼でもある。
「よ、じゃなくて…。こんな所で何してるのって聞いてるの」
「何って…、教育実習だって」
「教育…、って、短大出て就職したんじゃないの?」
彼はあたしと違う学校で、
違う勉強をしていた。
もう就職した、と
紗夜に聞いていたのに。