一緒に、歩こう
「じゃ俺帰るわ」
「え、もう…?」
「だって用事あんだろ?」
あ、と思い出す。
この空間が心地良くて、
すっかり忘れていた。
竣が来るんだ。
「…そうだった」
「また連絡するから」
そう言って帰ろうとした彼を。
あたしは引き留めてしまった。
「あ、えと…、」
車を降りて、道端で。
あたしは矢野くんの手を
黙って握りしめた。
「あのね。あたし矢野くんに…」
「大丈夫」
矢野くんは、
あたしの言葉を、大丈夫の
一言で遮った。