一緒に、歩こう
「今はいいから」
もしかしたら矢野くんは。
何かに気付いているのだろうか。
「全部終わってから、話してくれ」
「矢野くん…、」
何でこの人は、
こんなに優しいんだろう。
「明日、また来るから。その時は全部話せ。最後まで聞くから」
「…分かった、」
あたしが握る矢野くんの手が、
あたしの手を強く握り返す。
「矢野くん…、あたし」
矢野くんが好きだからね?
そう言うと、彼は。
鼻で笑って、あたしを抱きしめ。
「当たり前だろ、ばーか」
そう言って軽くキスをした。
触れるだけの、優しいキス。