一緒に、歩こう
「だけど今は違う」
そう言うと、
竣はあたしを抱きしめる力を
一層強める。
「竣はあたしのこと、好きだって言ってくれたけど…」
早く会いたい。
今すぐにでも会いたい。
あたしには、もう。
大好きな人がいる。
「もうあたし達は、戻れないの」
あたしは優しく彼を
引き離した。
あたしは、涙も出ない。
後悔ない言葉が出た。
「矢野、か?」
思いがけない、彼の言葉。
「矢野と付き合ってるのか?」
「何、言ってるの?」
何でそれを知っているのか。
あたしは一瞬にして、
頭がパニック状態に陥った。