一緒に、歩こう
「昔は、確かに竣が好きだったよ?」
もうダメ。
何を言われても。
どれだけ愛を囁かれても。
「でも今ね、すごく矢野くんに会いたい」
あたしが愛しているのは、
矢野くんだけなの。
「あの時の事情は分かった。だからもう、竣のこと憎んだり悲しんだりしない」
あたしがそう言うと、
竣はあたしを無理矢理
後ろを向かせた。
振り向く瞬間に、
少し見えた、竣の涙。
「何で…っ、矢野なんだ、」
悔しさがにじみ出た、
竣の言葉。
だからあたしは。
本音を告げた。
「ね、竣?」
もう帰らなきゃ。
矢野くんに連絡しなきゃ。