一緒に、歩こう


家の玄関には。




「遅ぇって」




矢野くんが待っていてくれた。

あたしは車を飛び降りて、

矢野くんに抱き着く。




「泣いたり笑ったり、忙しい女だな」




矢野くんはあたしの鞄から

家の鍵を抜き取ると、

あたしを抱えて中に入った。




「矢野く…、」




「話せ。ほら」




あたしをイスに座らせ、

矢野くんは目の前にしゃがむ。

親指で涙を拭いながら、

ゆっくり話を聞いてくれた。




「あたし、ね…っ」





隠すことなく、

全てを話す。

竣と幼馴染なこと。

昔付き合っていたこと。

理由も分からず

別れたこと。

嫌われていなかったこと。

好きだと言われたこと。


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