一緒に、歩こう





こんな日が続いたのは、

いつ頃からだろうか。

あれは確か…去年の冬のこと。

見回り当番だったあたしは、

放課後、学校内を歩いていた。

やっと最後の教室にたどり着き、

ドアを開けると、そこには

気持ちよさそうに眠る

矢野くんがいた。

誰か分からず、とりあえず

近寄った時。

この世に、こんな綺麗な

寝顔の人がいるんだと思って驚いた。

びっくりして後ずさりすると、

後ろの机にぶつかって音が鳴り、

矢野くんは目を覚ました。





「何時、今…」




「放課後よ。もう戸締りの時間です」




「…お前誰。名前、何?」






まだ眠いのか、矢野くんは

目をこすりながらあたしに

名前を訪ねてくる。

この学校に大学を卒業して

始めて来た年だから、

名前も顔を知られてなくても

仕方ないこと。





「朝比奈…芽衣子です。先生って呼びなさい。ほら、早く帰りますよ」





「…だっりぃ」







鞄を片手に、ドアの方に向かって行く。






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