一緒に、歩こう





「あたし、服着てないの!そのまま待っ…」





「ふざけんな。見せろよ」





悪い声で笑いながら、

無理矢理顔を出してくる。

あたしは顔を近くにあった

タオルで覆い、見えないように

顔を隠した。




「おはよ、隼人」




「何で隠すの?」




「何でって…恥ずかしいし、」





何で裸でこんなこと、とか

思いながら必死に抵抗する。





「顔赤いよ」




「やだ!見ちゃだめ!」




すると矢野くんは笑いながら。






「はいはい、おばかさん」





そう言って、自分にかけられていた

布団の横端を掴んで、

逆にあたしを布団でくるんだ。





「これ以上こうしてると漏れる」




それだけ言葉を残して、

トイレに歩いて行った。

布団にくるまれたあたしは

きょとんとしていたけど。

ふと気が付いて、

今だと思い服を手にした。

トイレから帰ってきた隼人は、

もう着たのかよ、なんて

言ってたけど。

トイレに行ったのが、

服着ろって意味でもあったくせに。

と、心の中で呟いた。

この旅行があたしにとって、

思い出になったのは

言うまでもない。




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