一緒に、歩こう
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新学期。9月。

初めて旅行から帰ってからも、

矢野くんは頻繁にあたしの

家に来て、宿題をやっていた。

英語になると分からないと言って、

教えてあげると抱き着いて来て。

ちゃんとやりなさい、と

叱るとすねて、ごめんね、と謝ると

ばかとか言いながらまた

抱き着いて来る。

そういう日々を過ごしていたせいか、

今までの休みよりも充実した

夏休みの期間だった。






「おはようございます」




始業式の次の日。

まさかの出来事、とは

こういうことなのかもしれない。

朝起きてみたら、体がだるかった。

熱を計ってみると、38度8分。

結構あたしにとっては高いんだけど、

学校を休むわけにはいかず、

鞄に大量の風邪薬をいれ、

仕方なくマスクをして学校へ向かった。

朝一の授業を終え、

ダメだ、と思ったあたしは

保健室に行こうと空きの時間に

向かうことにした。





「失礼しまーす」





一応生徒がいる想定で、

失礼しますと言うあたし。

すると誰もいなくて、

見えたのは保健医の

白石先生が座っていた。






「白石先生…」





「何、朝比奈」





白石先生は面倒見のいい先生で、

先生からも生徒からも

好かれている女性だ。

さばさばした性格の持ち主で、

何を話すのも楽な人。








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