一緒に、歩こう
「熱が…あるんです」
「どんくらい?」
「朝8度9分あって、」
正直にそう言うと。
「はい、健康~」
そう淡々と言って、
先生はイスから立ち上がった。
そう、白石先生は
あたしに対して冷たい。
ていうのも、本人いわく、
愛情の裏返しらしいんだけど。
前にあたしをいじるのが
好きだ、と言っていたっけ。
「ちょ、待って下さいよ~…」
「てか、悪いんだけど保健室にいて」
「あ、はい!すいませ…」
てっきり寝かせてくれるんだと思って。
あたしはベッドの方に行こうとした。
白石先生は、そんな期待を裏切って。
「だーれが寝ていいって言ったよ」
「は、い…?」
あたしはカーテンを持つ手を
引っ込めて、先生の元に歩く。
先生は鞄を肩にかけ、
車の鍵を持った。
「どこか行かれるんですか?」
「ちょっと用事。昼までに行かないとダメなんだわ」
…いやいやいや。
だからといって、ここに
あたしがいる必要はないはず。
むしろあたしは病人であって、
ここには他の先生を呼ぶことが
正解なはずなんだけど。
「悪いね、朝比奈。また礼するから」
「や、あの…あたし、」
体調が悪いんです。
なんて、もはや言える雰囲気ではない。
「じゃ、ちょっと行ってくるから」
頼んだよ~、と片手をあげ
白石先生は保健室を出ていった。