一緒に、歩こう
そんな。ひどい。
あたし、辛いんだってば。
しんどいんだってば。
熱…あるんだってば。
「白石先生ー、怪我したわー」
突然保健室のドアが開き、
生徒が白石先生の名前を呼んで
中に入ってきた。
「白石先生はちょっといらっしゃらないわ」
体操服を着ている男子生徒。
体育の時間なのかしら?
「えー、まじ?俺転けたんだけど」
痛がっている部分には、
砂がついていて、血も出ている。
自分で手当しなさい、って
言ってしまいたいけど。
「どこ?」
そんなこと言えるわけがなく。
「こっち来なさい。手当てするわ」
あたしは、仕方なく
男子生徒を水道の蛇口の場所まで
連れて行った。
擦り傷すくらい、手当て出来るはず。
「痛って!いてー!」
ついている砂とばい菌を取るために、
あたしは怪我をしている部分を
こしごし洗った。
そう、ごしごしと。
「先生荒いって!優しく!」
「あら。きっと白石先生もこうするわよ?」
きっと、じゃない。
絶対に。加減なく。
「いてー……」
男子生徒はうなだれて、
洗い終わった腕を見ながら
丸イスに腰を下ろした。
「はい、ここに腕出して」
目の前に腕を出させると、
消毒をして、ガーゼを貼った。
やっと終わった手当てに、
男子生徒はほっと一安心している様子。
「もう転けないでね?」
「はーい。すんませんでしたー」
失礼しました、と言いながら
少し嬉しそうに保健室を出ていった。