一緒に、歩こう
「大学だってさ、遠くなるだけの話でしょ?」
「そうだけど…」
「遠くなったら心も離れちゃうの?そんなの離れてみなきゃ分かんないでしょ?」
そうだ。そうだった。
九州に行くからって、何なのよ。
心が離れるなんて、ありえない。
「好きな人の背中、押してあげるのも役目だと思うよ?」
「紗夜…」
自分のことのように涙を浮かべて、
あたしに話をしてくれた。
あたしも一緒に涙を流して、
一言ごめん、と呟いた。
「そうだよね。背中、押してあげなきゃだめだよね」
「もしダメになったら…なんて考えないで。そん時はあたし達いるじゃん」
紗夜は、考えることが大人で。
あたしはまだ子どもだった。
覚悟を決めて、彼と歩んでいるはずが。
ぽろっと零した言葉には、
覚悟なんて微塵もなかった。
「ありがと…、紗夜」
「いいよ、別に。でもさ…」
そう言いながら紗夜はカウンターの
向こう側に視線を送る。
「何で誠二が泣いてるの、うっとうしい」
「紗夜ちゃん、いいこと言うし。芽衣ちゃん、頑張ってるんだし。香織ちゃん寝てるし。本当いい3人組だよ」
うんうん、と頷きながら
袖で涙を拭いている。
おかげで笑えて、
何かが吹っ切れた気がした。