一緒に、歩こう
「あ、そなの。この間、中西先生に言われて…それで、」
「何で聞かねぇの?」
「…、それ、は」
隼人はあたしを見つめているのに、
あたしは目を見れない。
何を告げられるのかが怖くて。
怖くて怖くて、たまらなくて。
「言わなかったことは謝る。でも、県外の話は前の話。っていうのも、別に行きたかったってわけじゃねぇし」
「でも、やりたいことがある、って…」
隼人は急にあたしの手を握って
話し始めた。
「中西にそう言ったのは、お前がいる場所から遠ざかりたかったから」
「え?」
あたしのいる、この場所から…?
「まだ付き合ってなくて、片想いだった時に県外に行きたいって言った。お前のこと、どうしても好きで。でも教師だし、絶対付き合えねぇと思ったから。それならすぐに会わない、会いたくても会えない場所に行こうと思った」
「そう、なの?」
頷いて、今度はあたしを
優しく抱きしめてくれた。
「でも。こんなことで進路変えるのもおかしい話かもしんねぇけど、今は県外に行く理由ねぇから」
「そんなっ…、やりたいこと、出来る場所にっ…」
「俺は!…お前の近くにいたい」
耳元でそう言って。
分かれよ、ばか。と呟いた。