一緒に、歩こう
学校に着くと、
生徒は誰もいない。
そりゃそうか、
まだ7時前だし。
1人で自分に突っ込みを入れ、
教室に行くことにした。
「よし、やるかー」
あたしは、去年と同じ場所で
同じ仕事をする。
バナナを剥いてみたり、
果物を切ってみたり。
去年はすごくいい売上だったから、
今年も注目されてるらしい。
あたしも頑張らなくちゃ。
「やってんじゃん」
突然教室と調理場の境の
のれんが開き、聞き覚えの
ある声が聞こえた。
あたしは少し肩をビクつかせ、
声の方を見る。
「びっくりした…、早かったね」
「紗月に乗せてもらった。あいつも早く来るって言ってて」
「そうなんだ。通りで」
早いわけだ。
そう言おうと思った時。
「わっ…」
突然矢野くんが、
あたしを抱きしめた。
あたしは思わず固まってしまう。