一緒に、歩こう
「芽衣子!」
近くのベンチで座っている時。
聞きなれた声が聞こえてきて
振り向くとそこには
少し歳を取ったお母さんが
あたしに向かって手を
振って立っていた。
「隼人、行こ」
あたしは立ち上がると、
隼人より一歩前を歩き
お母さんの元へと向かった。
「久しぶり、お母さん」
「結構待った?」
「ううん、さっき着いた所だから」
そう言うと、少し沈黙が走り。
お母さんはあたしから
隼人に視線を移した。
「初めまして。矢野隼人と申します」
いつも通りの顔をしている
つもりだろうか。
すごく強張った顔で
頭を下げている。
「どうも、芽衣子がお世話になってます」
お母さんも腰を曲げ、
お互いお辞儀をしながら
挨拶を交わす。
よく考えてみれば、
彼氏を紹介したのなんて
生まれて初めてかも。