一緒に、歩こう
あたしはそんなお父さんをよそに、
ドアの向こう側にいる隼人を
呼びに行く。
「入っていいよ」
未だ緊張している隼人は、
頷くだけ。
あたしは少し笑って、
隼人を連れ中に戻った。
「紹介、するね?」
立ち上がっていたお父さんは、
すとんと腰が抜けたように
ソファに腰を下ろす。
「あたしがお付き合いしている彼です」
「初めまして、矢野隼人です」
隼人がお辞儀をして、
顔を上げると、状況を
飲み込もうと必死の
お父さんがいた。
「彼氏…?」
「そうなの」
お母さんは台所の向こう側で、
くすくすと笑っている。
「とりあえず座りなさい」
しどろもどろお父さんは
あたしと隼人を向かいの
ソファに誘導した。