一緒に、歩こう
「今日はそのことをお話に来ました」
お母さんは手に持っていたビールを
一旦冷蔵庫に戻しに行き、
静かにお父さんの隣に
腰を下ろして隼人の
言葉を待った。
「芽衣子さんを知ったのは、2年前の4月です。僕が入学した時に、芽衣子さんも就任して来ました」
隼人は、お父さんとお母さんの
目をじっと見て語り始めた。
「教壇に立って挨拶をしている姿が綺麗で、でもその時はそれくらいにしか思ってなかったんです。だけど接していく内に、優しいんだとか、少しドジな所とかたくさん知ってきて、いつの間にか目で追うようになってたんです」
お父さんとお母さんは、
隼人を見つめながら
じっと座って話を聞いていた。
あたしも、隼人の胸の内を
聞くのは初めてで、
目を閉じて静かに聞くことにした。
「付き合う時も、僕が勝手に迫りました。でも芽衣子さんは、僕のことを考えてくれていて、付き合いを何回か断ったんです。それでも諦められなくて。こんなに1人の女性を恋しいと思ったことがなかったんです」
「そうだったの…」
何も言わないお父さんの隣で、
相槌を打ちながらお母さんは
涙ぐんでいた。