一緒に、歩こう
「悪かった」
竣は心底落ち込んだ声で、
そう言って暗い道を
1人帰って行った。
あたしは何をする事も出来ずに、
ただ立ち尽くした。
「芽衣子」
「はい…?」
頭上で名前を呼ばれ、
見上げると隼人は
難しそうな顔をしていた。
「お母さんが泣いてる」
「え、何で?」
「分かんねぇけど、俺に抱きついて泣いてた」
「よく分かんないけど、帰ろっか」
少し酔ってる隼人は、
子どもみたいにあたしに
黙って手を引かれている。
竣のことは家に帰っても、
1つも聞いてこなかった。
「お母さん、何泣いてるのよ」
「芽衣子が嫁に行っちゃうなんて…」
あたしが?嫁に?
いつそんなことを言ったんだろう。
そう思ってお父さんを見てみると。
「もう決まりだ。隼人くんとも約束したから、な!」
「はい!大事にしますんで」
お父さんと隼人は、
楽しそうに笑いながら
お互い頭を下げ合っている。