一緒に、歩こう
小さく囁くように言うと。
『お前は…っ、』
「なあに?」
『お前は、本当にばかだ』
その言葉と一緒に、
玄関のドアが開いた。
あたしは急いで玄関に向かうと、
すぐそこで仰向けになって
寝ころびながら息を
荒々しく吐いている
隼人がいる。
「走って、来てくれたの…?」
「あったりめーだ。ばか」
そして片手で頭を
自分の方に引っ張り、
抱き締めてくれた。
頬には冬なのに、
汗が少し流れていた。
「ごめんね、隼人」
「ちょっと喋んな。うるせーから」
まだ肩で息をしている隼人は、
少しの間、何も話さず
座ったままあたしを
抱き締めていた。
「ありがと」
その後、隼人は
帰らないといけないからと
すぐ家を出て行った。
少しの時間、
あたしのために走って
来てくれたことが、
何よりも嬉しかった。