一緒に、歩こう
「残念、矢野くん」
矢野くんの机の上に1枚の紙を置く。
【放課後、英語準備室に来るように。朝比奈】
と書いた紙。
現にこの紙を置いたことは、
1、2回しかなく。
矢野くんに渡すのは、
もちろん初めてで。
「以上で授業を終わります」
内心緊張しつつも、教室を後にした。
チャイムが鳴ると、他の教室から
たくさんの生徒が出て来る。
溢れ返りそうな廊下を歩きながら、
いつも思うこと。
どうして生徒を好きになったのか。
毎日、自分を責めてしまう。
絶対叶わない。
絶対手に入らない。
分かってるのに。
どうしても目で追ってしまう。
苦しい。悲しい。そして愛しい。
生徒ならたくさんいるのに。
どうしても矢野くんじゃないと、ダメで。
そんな自分が、情けなくて可笑しい。