一緒に、歩こう



「戸締りしてたの」




今更震えてきた。

怖かった。

生徒とはいえ、相手は男。

簡単に振り切ることが出来なかった。




「ちゃんとズボン履いてんだ」




「あ、うん。だって…」



矢野くんが言ったんじゃん。

そう言おうとした時。




「言ったこと、守ってろよ」




まっすぐ見つめる瞳に

圧倒されて。





「危ねぇ目に合わずに済んだろーが」




これ。と。

矢野くんはズボンをちょんちょんと

引っ張ってそう言った。

スカートよりズボンの方が

いいって、何か考えがあって

言ってくれたの?

笑うな、って。

不細工っていうのは、

意味あっての言葉なの?





「んとお前って抜けてるよな。ばかみてぇに子ども並み」




「…なっ、何よ」





立場が逆転していて。

どっちが大人で、子どもなのか

分かんなくなった。


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