一緒に、歩こう
すぐ後ろで、
声が聞こえた。
会いたい、と願ったからか。
話したい、と望んだからか。
「矢野く、ん…」
後ろから聞こえるのは、
確かに矢野くんの声。
驚いているからか、
体を動かせず後ろを
振り返れない。
「邪魔なんだけど。靴取らせろよ」
「あ、ご…ごめん!」
その場で立ち止まっていたせいで、
立ち尽くしていた場所は
彼の下駄箱の前。
「じ、じゃ…気を付けて帰ってね」
ひどく動揺してるあたしだけど、
落ち着いて驚きを見せないで。
いつも通り声を出した。
「さよな、っ…」
さよなら。その言葉を
言い終える前に、
あたしの体が引っ張られた。