一緒に、歩こう




すぐ後ろで、

声が聞こえた。

会いたい、と願ったからか。

話したい、と望んだからか。





「矢野く、ん…」




後ろから聞こえるのは、

確かに矢野くんの声。

驚いているからか、

体を動かせず後ろを

振り返れない。




「邪魔なんだけど。靴取らせろよ」




「あ、ご…ごめん!」



その場で立ち止まっていたせいで、

立ち尽くしていた場所は

彼の下駄箱の前。




「じ、じゃ…気を付けて帰ってね」




ひどく動揺してるあたしだけど、

落ち着いて驚きを見せないで。

いつも通り声を出した。




「さよな、っ…」




さよなら。その言葉を

言い終える前に、

あたしの体が引っ張られた。


< 71 / 497 >

この作品をシェア

pagetop