一緒に、歩こう
「待ってんの」
次に言われた言葉で、
一気に鼻の奥が
痛くなった。
「彼女」
――――――彼女。
矢野くんの、彼女。
「あ。あー、そうだったの!ごめんね、邪魔しちゃって!」
不自然な言い方、態度、声。
怪しく思われたかもしれない。
でもそんなのお構いなし。
一刻も早く、ここを立ち去らなきゃ。
あたしの涙腺が。
「それじゃ…っ」
――――――崩壊しちゃうの。
情けない。
"彼女"
そう聞いた瞬間の、
この気持ちの揺れ。
彼女って言葉に、
敵う言葉は存在しない。