一緒に、歩こう
「はい、おしまい!」
ガーゼを貼って、
手当て終了。
矢野くんはあたしを
睨みながら立ち上がる。
「お前こんな簡単なことも器用に出来ねえのか」
「案外難しいよ、これ。あー、疲れちゃった。でも何かあたし手当ばっかしてるね!」
「なのに下手なのな」
他愛もない2人の会話。
矢野くんは、あたしを見て
笑って話してくれる。
あたしもつい楽しくて、
自分の立場を忘れそうになった。
「もういいわよ!さ、戻って!」
「保健室行くわ。じゃあな」
…ん?
保健室?
「何で?あたしの手当てじゃ不満だって言うの?」
「ちげーわ、ばか。だりぃから寝る」
「残りの競技あるんじゃないの?」
「午後からだから。それまで寝る」
背中を向け、
真っ直ぐ校舎に向かって
歩いて行く彼。