一緒に、歩こう
「矢野くんってば!」
「分かった分かった。約束してやっから」
背中を向け、歩き始めた矢野くんは
再びあたしの方に向かって
歩いて来る。
約束?と、首を傾げると
矢野くんはあたしの
腕を強引に引いた。
「…っ、」
「昼からのリレー、1位取ってやるから」
「リレーで…?」
グラウンドの片隅で。
全生徒が競技に夢中になっている中、
あたしは矢野くんに耳打ちされた。
そして矢野くんは。
"ちゃんと見とけ"
そう言い残して、
また背中を向けて
歩いて行った。
その姿から目を離せなかった
ことは言うまでもない。