一緒に、歩こう
「隼人っ!」
「うっせぇ、朝比奈。寝かせろよ」
その場の空気が。
一瞬で凍った。
「は…、やと?」
矢野くんが、
寝ぼけながらあたしの
名前を呼んだ。
いつも彼を起こす時、
今と同じように
あたしの名前を呼ぶ。
揺すると絶対手を引いて、
身動きが取れないように。
寝かせろ、と言った後は。
絶対に。
「朝比奈も寝ろ」
こう言うの。
「隼人!」
荒々しく、春野さんは
矢野くんの布団を剥がす。
矢野くんは、まだ目を
擦りながら体を起こす。
「…ぁ、桜良か?んだよ、そんな顔して」
矢野くんは、
自分の言ったことを
覚えていない。