一緒に、歩こう
「春野さんもまだ種目あるでしょ。矢野くんも、もうリレーだから来いって言ってたわよ。ほら、早く起きてグラウンドに来なさい。いいわね?」
気付けば息が出来なくなるほど、
一気に話していた。
その場に2人残して廊下に出る。
こんなこと、あるのだろうか。
どうして矢野くんは。
「あたしの名前…」
あたしの名前を、
呼んだのだろうか。
心臓がやけにうるさい。
ドキドキが止まらない。
足が、膝が震える。
「ばか…、」
喜びと、驚きが入り混じった
複雑な気持ちでいっぱいになる。
その場から離れ、1人
2組の教室に向かう。
当然誰もいなくて、
あたしは1人で佇んだ。
もうリレーなんて見ていられない。
今、矢野くんを見ちゃったら、
きっとあたし。
「好き…よ、」
矢野くんに、
抱きつきたくなる。
大きな背中に、
少し触れたくなっちゃう。