一緒に、歩こう




「おはよ、矢野くん」



他の生徒は隅っこで

材料を切ったり、クラス内の

飾り付けをしている。

調理する場所をあたしに

譲ってくれたのだ。




「料理すんの?」





「当たり前でしょ、これでも女よ?」




調理場は移動式の掲示板で

囲まれている造り。

出入り口にはのれんが

かかっている。

中には、今あたしだけだったのが

いつの間にか矢野くんと

2人きりになっていた。





「誰でも出来るだろ、それくらい」




「じゃあ手伝ってくれる?」




「貸せ」




パフェに使うバナナや

桃を切るのに持っていた

包丁を、矢野くんが

強引に奪うと、

いつになく真剣に

まな板に視線を送っていた。



< 96 / 497 >

この作品をシェア

pagetop