一緒に、歩こう
「おはよ、矢野くん」
他の生徒は隅っこで
材料を切ったり、クラス内の
飾り付けをしている。
調理する場所をあたしに
譲ってくれたのだ。
「料理すんの?」
「当たり前でしょ、これでも女よ?」
調理場は移動式の掲示板で
囲まれている造り。
出入り口にはのれんが
かかっている。
中には、今あたしだけだったのが
いつの間にか矢野くんと
2人きりになっていた。
「誰でも出来るだろ、それくらい」
「じゃあ手伝ってくれる?」
「貸せ」
パフェに使うバナナや
桃を切るのに持っていた
包丁を、矢野くんが
強引に奪うと、
いつになく真剣に
まな板に視線を送っていた。