一緒に、歩こう
彼なりに必死に切る。
だけど仕上がったバナナや
桃は、形がバラバラで。
「矢野くん、ここはこう持つんだよ」
「………、」
「ここはこういう風に」
「あ、やべ」
数をこなすごとに、
矢野くんは雑に。
「もうやらね」
矢野くんは、そう言うと
あたしに包丁を渡した。
「やらないの?」
「俺見てる側でいい。お前が切れよ」
ふっ、と鼻で笑うと、
あたしの横にあるイスに
腰を掛けた。
仕方なくあたしは、
再び材料を切ることに。
隣に座る矢野くんは、
何をするわけでもなく
ただ座ってあたしの
切っている姿を見ている。