一緒に、歩こう
トントントン、と
まな板にぶつかる包丁の
音が響く。
調理場の外からは、
生徒の声が聞こえる。
でもここは、ただ無言。
「矢野くん」
「あ?」
こうしていることは、
全然苦じゃない。
だけど、矢野くんは
あたしのものじゃなく
2組の人間だ。
「ここにいないで、あっち手伝っておいでよ」
「めんどくせぇから行かねぇ」
ここであたしが独占するのは、
決してよくないし。
それに手伝わせるのが、
あたしの役目。
「でも、みんなが…」
「うるせぇ、行かねぇって。ばか」
あたしは何も言えなくて、
包丁を進める。
トントントンって、音が。
「聞いてんだよ。お前が切る音」
心臓と並行に鳴り響く。
この男は、本当に罪だ。
そんなこと言うから。
バナナを必要以上に
切りすぎたじゃない。