恋は陽炎 ~道化師の初恋~
「そうだったんですか。あのう、今は夢は見付かったんですか?」

 奈々は淋しげな表情で窓の外を見た。

「私の夢。それは、先ずは大学を卒業したらキチンと就職することだよね、当たり前だけど。で、それとは全く別のことなんだけど、好きな人が私のところへ戻ってきてくれることが今、一番望んでいる夢なのかも知れない。これって夢って言うのかどうかは分からないけど、その人と結婚して幸せな生活を夢見たりすることがあるから、一応夢ってことにしといてね」

「その人と別れたんですか?」

「う―ん。別れたっていうか。私は別れてはいないつもりなんだけど、彼のほうはどうだか分からないんだ」

「何か難しいんだけど・・・」

「そうね。私自身が難しいんだから、亜美菜ちゃんは尚更だよね」
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