恋は陽炎 ~道化師の初恋~
「よし、取り敢えず私の夢は奈々さんに笑顔を取り戻させることだ」

 亜美菜は、そう決意すると薄くなった布団に潜り込んだ。 

 今日は朝から冷たい雨が降って、春間近な季節を冬に逆戻りさせていた。

「何これ。寒過ぎる―」

 それでも亜美菜は図書館に向かうつもりだった。 
「奈々さん、こんな雨でもきっと来るもん」

 だが、こんな時に限って両親は用事があって車で出掛けてしまっている。お母さんに電話したが、今日は家にいなさいという返事が雨と同じで冷たかった。
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