恋は陽炎 ~道化師の初恋~
 駐輪場は当然のようにスカスカで、亜美菜は乱暴に自転車を止めると、急いで図書館に向かった。 

「お願い、居て」

 図書館に入ると、係員の女の人が驚いた顔をした。しかし、それには構わず、いつもの場所に小走りした。 

「居ない」

 亜美菜は落胆した。後ろから来た係員がタオルを頭に掛けてくれたが、「ありがとう」すら言えなかった。
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