恋は陽炎 ~道化師の初恋~
「奈々さん、会いたいよ」 
 雨で人が少なく館内を何度も何度も廻った。 
 最初は興味げに見てた人達も、そのうちに誰も構わなくなって亜美菜は孤独になった。 

「さっきから何やってるの?」

 亜美菜は、もしやと思ったが、それは男の声であり、あの細い声とは全く違ったものであった。 

 亜美菜は、その声をきっかけに諦めた。しかし、その声は更に続いた。 

「俺だよ、俺。忘れちゃったの?」

 振り返ると、そこに立っていたのは、あの時に消えて無くなった彼であった。
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