恋は陽炎 ~道化師の初恋~
「知り合いなんかじゃないよ、こんな奴」

 奈々の顔は怒りに満ちて、それは亜美菜にも充分に分かる程のもので、もしかしたら、上手くいってない彼氏とはこの人の事なんじゃないかと思った。

「とにかく、すぐに出ていきなさいよ。そして、今後いっさい私にその顔を見せないで」

「別にお前に会いに来たんじゃねえよ」

「いいから出てって」

 奈々が両手でテ―ブルをドンと叩くと、大勢の人がこっちを注目した。中にはヒソヒソと話を初める人達も居る始末で、亜美菜は急に居心地が悪くなった。

 亜美菜は、この空間がこのまま無くなってしまうのが怖かった。そして、大好きな奈々さんも図書館と一緒に消えてなくなりそうで、それを思うと涙が溢れ止まらなくなった。
 亜美菜は、今一番大切にしている二つを同時に失おうとしている。


 あんな些細な、魔が差したとしか言いようが無いたった一通の返信が、大切な人を傷つけてしまうなんて。

 やっぱり私は・・・・根っからの道化師なんだろうか。

 道化師なんて、やめたい・・・・

 そして、恋も・・・・・

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