幽霊の思い出話

「おいっ、宿役人。早く来てくれ、先程からの騒動知らないわけではないだろう?」

 宿の中に入るなり、力いっぱい叫んだ。

「あー、すみません。少々用事をしていたもんですから。一体なんだって言うんですか?」

 のんきに前掛けで手を拭きながら出てきたこいつを殴ってやりたいと思った。でも、今これ以上問題を増やすわけにはいかない。

「手配したはずの宿が取れてねぇって、一体どうなってるんだ」

「そう言われましても・・・。こちらは言われた通りにしたはずですが」

「あぁ、面倒なやつだ。いいから来てくれ」

 宿役人の手を掴み、引きずり出し表に出た。その時だった・・・。
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