幽霊の思い出話

「・・・嘘だろ」

「なんだよ、これっ」

 驚いた。もう夕暮れだというのに明るい。

「あっ、あぁぁぁ」

 宿役人が悲鳴にも似た声を発しながら、力なく俺の手からすり抜けるように地面へと座り込んだ。

「平助、悪い。手貸してくれ。こいつ連れて行かなきゃいけねぇ、土方さんが待ってる」

「う、うん」

 めらめらと燃える炎が道の真ん中にそびえ立っていた。宿に燃え移らんばかりの炎が・・・。

「土方さん、連れてきたぜ」

「あぁ、ありがとう。芹沢さん、ここの宿役人です」

 土方さんが引き連れて芹沢さんの前に連れて行った。
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